数学1・A|2017センター試験・第3問を解いてみよう
第3問(4)
解答欄コ,サ,シ,スセ
小問(4)のうち、解答欄コ,サ,シ,スセに関する問題です。
解答欄コ,サ,シ,スセ
$B \ , \ C$ の少なくとも一方があたりのくじを引く事象 $E_{2}$ の確率
小問(2)と似たような形式なので、同じようにして解くことができます。3つの問がありますが、上から順に誘導に従って解いていきましょう。
「B,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く」ときの結果を書き出します。
「B,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く」事象
$B \ , \ C$ の少なくとも一方があたりのくじを引く事象を書き出すと
($A \ , \ B \ , \ C$)=(当,当,は),(当,は,当),(は,当,当),(は,当,は),(は,は,当)
の $5$ 通りある。
全部で5通りあります。
選択肢を見ると「はずれ」の文言が出てきているので、はずれに注目しながら結果を見ていきます。すると以下のようなことが分かります。
はずれに注目すると分かること
- (は,当,当),(は,当,は),(は,は,当):「Aがはずれを引く事象」に対応
- (当,当,は):「Bだけがはずれを引く」事象に対応
- (当,は,当):「Cだけがはずれを引く」事象に対応
ここで注意したいのは、「Aが」と「Aだけが」では意味が異なるということです。「Aが」とある場合、A以外のBやCのことを考える必要があります。ここは読解力が必要な場面です。
これら3つの事象は互いに排反であると言えるので、この3つの事象の和事象が事象E2であることが分かります。
解答欄コ,サ,シの解答例をまとめると以下のようになります。
また、3つの事象の確率を求めて和を取れば、和事象の確率、つまり事象E2の確率を求めることができます。
解答欄スセの解答例をまとめると以下のようになります。
解答欄ソタ
小問(4)の最後は解答欄ソタに関する問題です。
解答欄ソタ
$A \ , \ C$ の少なくとも一方があたりのくじを引く事象 $E_{3}$ の確率
この問題もこれまでと同じようにして求めるか、余事象を利用して求めます。スピードを求めるなら余事象ですが、小問(5)のことを考えて結果を書き出しておくと良いでしょう。
「A,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く」ときの結果を書き出します。
「A,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く」事象
$A \ , \ C$ の少なくとも一方があたりのくじを引く事象を書き出すと
($A \ , \ B \ , \ C$)=(当,当,は),(当,は,当),(は,当,当),(当,は,は),(は,は,当)
の $5$ 通りある。
結果を書き出すと5通りあることが分かります。これらの結果が出てくる事象は、同時に起こることはないので互いに排反です。
このことから、各事象の和事象が事象E3になります。また、その確率は5つの排反な事象の確率の和になります。
解答欄ソタの解答例をまとめると以下のようになります。
第3問(1)~(4)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
第3問(5)
解答欄チ
小問(5)は解答欄チに関する問題です。
解答欄チ
$3$ つの条件付き確率 $p_{1} \ , \ p_{2} \ , \ p_{3}$ を求め、それらの値の大小を比較する問題
3つの条件付き確率p1,p2,p3の値の大小を比較する前に、これらのことを確認しておきます。
3つの条件付き確率p1,p2,p3 について
- 条件付き確率p1:事象E1が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率
- 条件付き確率p2:事象E2が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率
- 条件付き確率p3:事象E3が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率
事象E1が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率p1については、小問(3)ですでに求めています。
残り2つの条件付き確率p2,p3も、同じようにして共通部分を考えてから公式で求めます。
共通部分を考えるために、事象E,E1,E2,E3について結果を書き出して並べると、次のようになります。
書き並べてみると分かるように、事象Eは、事象E1,E2,E3にそれぞれ含まれています。つまり、どの共通部分も事象Eに等しいことが分かります。
各共通部分の確率は、それぞれの条件付き確率の分子になるものです。共通部分がすべて事象Eに等しくなるということは、分子はすべて等しくなります。
分子が等しいとき、分母の値によって大小を調べることができますが、ここでは3つの条件付き確率をそれぞれ求めて値の大小を比較します。
解答欄チの解答例をまとめると以下のようになります。
条件付き確率を求めるとき、解答例のように確率を用いて計算することがあります。この計算では分数の中に分数が出てくるので、計算ミスをしやすいかもしれません。
ですから、場合の数がすでに分かっていれば、場合の数を積極的に用いた方が計算が楽になります。
条件付き確率の公式
事象 $A$ が起こったときの事象 $B$ が起こる条件付き確率 $P_{A}(B)$ は
\begin{align*} \quad P_{A}(B) &= \frac{n \left(A \cap B \right)}{n \left( A \right)} \\[ 7pt ] &= \frac{P \left(A \cap B \right)}{P \left( A \right)} \end{align*}条件付き確率 $P_{A}(B)$ は、事象 $A$ が全事象になり、その事象 $A$ の中で共通部分となる事象 $A \cap B$ が起こる確率を求めたもの。
第3問(5)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
従来の「場合の数と確率」の問題と第3問の比較
「場合の数と確率」に関する問題は、例年ならば「具体的で易しい問題から、抽象的で複雑な問題へ」という構成で、徐々に難易度が上がるイメージがありました。
しかし、小問(1)~(4)が最後の小問(5)を考えるための布石のような構成になっており、場合によっては小問(2)くらいから躓いてしまう可能性がありました。
また、結果を漏れなく書き出し、それをもとに確率を求めるだけでなく、用語の意味を正しく理解しているかも問われた問題でした。ですから、暗記に頼った学習では手も足も出せなかった可能性があります。
何事も覚えることから始まるが、理解につなげる学習を。「暗記でどうこうできるほど甘くない」ということを肝に銘じておこう。
なお、結果を書き出すことは基本的に最後の手段であることが多いので、結果を書き出さずに解き始めた人もいるかもしれません。
条件付き確率を求めるときになって、結果を書き出す必要があることに気付きますが、最初から書き出していた方が全体的にはスムーズに解けたでしょう。
結果を書き出すかどうかは、すべての場合の数を考えれば判断できます。すべての場合の数が少なければ書き出した方が良いでしょう。
教科書で確認しておきたい知識
- 「排反」とは、2つの事象が同時に起こらないこと。
- 排反である2つの事象を含む事象は、和事象となる。
- 和事象の確率は、排反である2つの事象の確率の和で求めることができる。
- 条件付き確率を求めるとき、共通部分の事象の確率を考えること。
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