式と証明|多項定理について
多項定理を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問1
次の展開式における $[ \ ]$ 内に示した項の係数を求めよ。
\begin{align*} &(1) \quad (a+b+c)^{\scriptsize{5}} \quad [ \ ab^{\scriptsize{2}}c^{\scriptsize{2}} \ ] \\[ 7pt ] &(2) \quad (x+2y+3z)^{\scriptsize{4}} \quad [ \ x^{\scriptsize{3}}z \ ] \end{align*}問1は、3つの項からなる多項式を展開する問題です。
4次式や5次式の展開なので、多項定理を利用します。また、特定の項の係数を求めるために、一般項を利用します。
問1(1)の解答・解説
問1(1)
次の展開式における $[ \ ]$ 内に示した項の係数を求めよ。
\begin{align*} \quad (a+b+c)^{\scriptsize{5}} \quad [ \ ab^{\scriptsize{2}}c^{\scriptsize{2}} \ ] \end{align*}与式を見ると、カッコ内にある3つの項の係数がすべて1です。このような多項式の展開であれば、それほど難しくありません。
一般項と求めたい項を比べて、対応関係を調べます。
問1(1)の解答例 1⃣
比べた結果から、求めたい項の係数を求めます。
問1(1)の解答例 2⃣
別解として、二項定理を利用して解くこともできます。
問1(1)の別解例
$\{ (a+b)+c \}^{\scriptsize{5}}$ において、$c^{\scriptsize{2}}$ を含む項は
\begin{align*} \quad {}_5 \mathrm{ C }_2 (a+b)^{\scriptsize{3}} \ c^{\scriptsize{2}} \end{align*}また、$(a+b)^{\scriptsize{3}}$ において、$ab^{\scriptsize{2}}$ の項の係数は
\begin{align*} \quad {}_3 \mathrm{ C }_2 \end{align*}よって、求める項の係数は
\begin{align*} \quad {}_5 \mathrm{ C }_2 \times {}_3 \mathrm{ C }_2 &= 10 \cdot 3 \\[ 7pt ] &= 30 \end{align*}三項式を二項式に変形して、二項定理を利用するのがポイントです。
自分が解ける形に変形しよう。
問1(2)の解答・解説
問1(2)
次の展開式における $[ \ ]$ 内に示した項の係数を求めよ。
\begin{align*} \quad (x+2y+3z)^{\scriptsize{4}} \quad [ \ x^{\scriptsize{3}}z \ ] \end{align*}問(2)も多項定理を利用して係数を求める問題です。
問(1)と異なるのは、カッコ内にある項の係数が1ではないものがあることです。このような多項式の展開では、係数を間違いやすいので気を付けましょう。
一般項と求めたい項を比べて、対応関係を調べます。
問1(2)の解答例 1⃣
比べた結果を利用するのは問1(1)と同じですが、係数だけを求めることはしません。
問1(2)の解答例 2⃣
カッコ内にある項の係数が1でなければ、組合せの総数だけでは係数になりません。各項の係数も影響するので、一般項全体を書き出して考えるようにしましょう。
カッコ内にある項の係数が1でなければ、組合せの総数だけで係数を求めてはいけない。一般項全体から係数を求めよう。
次の問題を解いてみましょう。
問2
次の展開式における $[ \ ]$ 内に示した項の係数を求めよ。
\begin{align*} \quad (x^{\scriptsize{2}}+x+1)^{\scriptsize{7}} \quad [ \ x^{\scriptsize{3}} \ ] \end{align*}問2も多項定理を扱った問題ですが、問1よりも難易度の高い問題です。実際に求めたい項を抜き出してみると違いが分かります。
問2の解答・解説
一般項と求めたい項を比べて、対応関係を調べます。
問2の解答例 1⃣
対応関係から分かるように、カッコ内の1番目と2番目の項はともにxを含みます。これが原因で、各項をそれぞれ何乗すれば良いのか分からないので、指数p,q,rの値が決まりません。
各項を何乗するのかは考えず、一般項の式を用いて求めたい項を表します。
問2の解答例 2⃣
与式において $x^{\scriptsize{3}}$ の項は
\begin{align*} &\quad \frac{7!}{p!q!r!} \left( x^{\scriptsize{2}} \right)^{\scriptsize{p}} \ x^{\scriptsize{q}} \ 1^{\scriptsize{r}} = \frac{7!}{p!q!r!} x^{\scriptsize{2p+q}} \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{と表せる。} \end{align*}一般項を用いて求めたい項を表しましたが、指数を比較してもp,qの値が定まりません。どうやら、問1と同じ要領で係数を求めることができないようです。
問2は、単に多項定理の式を利用するだけでは解けない問題です。p,qの値を定めるには、p,q,rに関する条件を利用します。
ここで、多項定理における一般項とその条件を確認しておきましょう。
多項定理における一般項
但し書きの部分がp,q,rに関する条件です。この条件を利用して、p,qの値を定めます。
問2の解答例 3⃣
ここで、①が $x^{\scriptsize{3}}$ の項となるのは
\begin{align*} &\quad 2p+q=3 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad q=3-2p \\[ 7pt ] &\text{のときである。} \\[ 5pt ] &\text{$q \geqq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad 3-2p \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad p \leqq \frac{3}{2} \\[ 7pt ] &\text{これと $p \geqq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad 0 \leqq p \leqq \frac{3}{2} \\[ 7pt ] &\text{$p$ は整数であるので} \\[ 5pt ] &\quad p = 0 \ , \ 1 \\[ 7pt ] &\text{また、$q=3-2p \ , \ r=7-p-q$ より} \\[ 5pt ] &\quad p=0 \ \text{のとき} \quad q=3 \ , \ r=4 \\[ 7pt ] &\quad p=1 \ \text{のとき} \quad q=1 \ , \ r=5 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad (p \ , \ q \ , \ r) = (0 \ , \ 3 \ , \ 4) \ , \ (1 \ , \ 1 \ , \ 5) \end{align*}少し長くなりましたが、やっとp,q,rの値が定まりました。
p,q,rの組が複数あるのは、カッコ内にある1番目と2番目の項に、同じ文字xが使われているからです。どちらの場合でも、指示された項が得られます。
多項定理を扱った問題では、問2のような問題の方が多く出題されるので、p,q,rの組が1通りに定まらない場合もあると覚えておきましょう。
各組ごとに係数を求めます。各組ごとに得られる項は同類項になるので、それらの和が求めたい項になります。
問2の解答例 4⃣
多項定理を扱った問題は、特定の項の係数を求める問題が基本です。展開式を求める問題はまず出題されないので、一般項を利用した係数の求め方をしっかりマスターしておきましょう。
また、一般項を利用する問題では、指数法則の知識が必須です。指数法則は、どの単元でもよく利用されるので、しっかり使えるようにしておきましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 多項定理では、一般項の式を利用する。
- 多項定理では、特定の項についての問題がよく出題される。
- 多項式の各項に同じ文字があるときは要注意。
- 指数の条件を利用して、整数の組を求めよう。