数と式|二重根号について
二重根号を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
各問は、根号の中に根号があるので、二重根号を扱った問題です。「計算せよ」と指示されていますが、要は「二重根号を外せ」ということです。
問1の解答・解説
問1
次の式を計算せよ。
\begin{align*} \quad \sqrt{5+2\sqrt{6}} \end{align*}根号の中の式は、2項からなる多項式です。この多項式を変形して、2乗の形を作ります。
多項式の5と6に注目して、①式のa,bに対応する2数を考えます。2数は、和が5、積6になる組合せです。
与式と①式を上下に並べてみると、2数の組合せを考えやすくなります。
与式と①式を比べる
\begin{align*} \quad \left(a+b \right) +2\sqrt{ab} = \left( \sqrt{a}+\sqrt{b} \right)^{2} \quad \cdots \text{①} \end{align*}与式から根号の中の式を抜き出すと
\begin{align*} \quad 5+2\sqrt{6} \end{align*}これと①式の左辺とを比べると
\begin{align*} \quad a+b=5 \ , \ ab=6 \end{align*}となる $2$ 数を考えれば良い。
組合せが分かれば因数分解します。このとき、2数のうち大きい方の数を前に書く習慣を付けておきましょう。
問1の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{5+2\sqrt{6}} &= \sqrt{\left(\sqrt{3} \right)^{2}+2\sqrt{3}\sqrt{2}+\left(\sqrt{2} \right)^{2}} \\[ 7pt ] &= \sqrt{\left(\sqrt{3}+\sqrt{2} \right)^{2}} \end{align*}因数分解が終わったら、外側の根号を外します。このとき絶対値の記号を付けておきましょう。
問1の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{5+2\sqrt{6}} &= \sqrt{\left(\sqrt{3} \right)^{2}+2\sqrt{3}\sqrt{2}+\left(\sqrt{2} \right)^{2}} \\[ 7pt ] &= \sqrt{\left(\sqrt{3}+\sqrt{2} \right)^{2}} \\[ 7pt ] &= \left| \sqrt{3}+\sqrt{2} \right| \end{align*}根号の中にある多項式の値の正負を吟味します。絶対値の規則に従って記号を外します。
問1の解答例 3⃣
\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad &= \left| \sqrt{3}+\sqrt{2} \right| \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad \sqrt{3}+\sqrt{2} \gt 0 \end{align*}より
\begin{align*} \quad \sqrt{5+2\sqrt{6}}=\sqrt{3}+\sqrt{2} \end{align*}「計算する」というよりも「変形する」と言う方が適切かもしれません。
問1のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。慣れたら暗算で因数分解してしまいましょう。
問2の解答・解説
問2
次の式を計算せよ。
\begin{align*} \quad \sqrt{5+\sqrt{24}} \end{align*}問1よりも難易度が上がりました。与式のままでは因数分解できません。気づきましたか?
与式と①式を比べてみると分かります。
与式と①式を比べる
\begin{align*} \quad \left(a+b \right) +2\sqrt{ab} = \left( \sqrt{a}+\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \quad \cdots \text{①} \end{align*}与式から根号の中の式を抜き出すと
\begin{align*} \quad 5+\sqrt{24} \end{align*}これと①式の左辺とを比べると
\begin{align*} \quad \underline{2}\sqrt{ab} \ , \ \sqrt{24} \end{align*}より、式の形が異なる。
与式の多項式では、根号の前に2が付いていません。同じ形になっていないので、このままでは因数分解できません。
このような問題では、①式と同じ形に整えることを優先します。
平方根の性質を利用して、多項式の平方根を変形します。
問2の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{24}=\sqrt{2^{2} \cdot 4}=2\sqrt{6} \end{align*}より、与式は
\begin{align*} \quad \sqrt{5+\sqrt{24}} =\sqrt{5+2\sqrt{6}} \end{align*}与式を変形すると、問1と同じ式になりました。あとは問1と同じ計算過程になります。
問2の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{24}=\sqrt{2^{2} \cdot 4}=2\sqrt{6} \end{align*}より、与式は
\begin{align*} \quad \sqrt{5+\sqrt{24}} =\sqrt{5+2\sqrt{6}} \end{align*}問 $1$ の結果から
\begin{align*} \quad \sqrt{5+\sqrt{24}} &=\sqrt{5+2\sqrt{6}} \\[ 7pt ] &= \sqrt{\left(\sqrt{3}+\sqrt{2} \right)^{2}} \\[ 7pt ] &= \left| \sqrt{3}+\sqrt{2} \right| \\[ 7pt ] &=\sqrt{3}+\sqrt{2} \quad \left(\because \sqrt{3}+\sqrt{2} \gt 0 \right) \end{align*}問2のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。
2乗の形に因数分解できるかどうかは、根号の前に2があるかどうかで決まる。必ず確認しよう。
問3の解答・解説
問3
次の式を計算せよ。
\begin{align*} \quad \sqrt{3+\sqrt{5}} \end{align*}問3は問2以上に工夫しないと解けません。問2と同じように、平方根の性質を利用しても、根号の前に2ができません。
こんなとき、根号の中の多項式を分数にします。分母が2の分数に変形すると、分子を2倍することになります。この作業によって、根号の前に2ができます。
問3の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{3+\sqrt{5}} &=\sqrt{\frac{2\left(3+\sqrt{5} \right)}{2}} \\[ 7pt ] &=\sqrt{\frac{6+2\sqrt{5}}{2}} \end{align*}根号の前に2を作る方法
- 平方根の性質を利用して、平方根を変形する
- 根号の中にある多項式を、分母が2の分数にする
根号の中の式が分数になるので、平方根の性質を利用して、根号を分母と分子に分けます。根号を分けないままでも、分子の因数分解はできるので、この辺りは好みの問題です。
問3の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad \sqrt{3+\sqrt{5}} &=\sqrt{\frac{2\left(3+\sqrt{5} \right)}{2}} \\[ 7pt ] &=\sqrt{\frac{6+2\sqrt{5}}{2}} \\[ 7pt ] &=\frac{ \sqrt{6+2\sqrt{5}} }{ \sqrt{2} } \end{align*}分子が二重根号になっています。
和が6で、積が5になる2数の組合せを考えて、二重根号を外します。ただし、二重根号を外すとき、絶対値の記号を付けるのを忘れないようにします。
問3の解答例 3⃣
\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] &=\frac{ \sqrt{6+2\sqrt{5}} }{ \sqrt{2} } \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad \sqrt{6+2\sqrt{5}} &=\sqrt{\left(\sqrt{5} \right)^{2}+2\sqrt{5}\sqrt{1}+\left(\sqrt{1} \right)^{2} } \\[ 7pt ] &=\sqrt{ \left(\sqrt{5}+\sqrt{1} \right)^{2} } \\[ 7pt ] &=\left|\sqrt{5}+1 \right| \quad \left(\because \sqrt{1}=1 \right) \\[ 7pt ] &=\sqrt{5}+1 \quad \left(\because \sqrt{5}+1 \gt 0 \right) \end{align*}これを分子に戻すと
\begin{align*} \quad \frac{ \sqrt{6+2\sqrt{5}} }{ \sqrt{2} }=\frac{\sqrt{5}+1}{ \sqrt{2} } \end{align*}無事に分子の二重根号を外せましたが、分母に平方根があります。このまま放置せず、分母を有理化します。
問3の解答例 4⃣
\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad &\frac{ \sqrt{6+2\sqrt{5}} }{ \sqrt{2} } =\frac{\sqrt{5}+1}{ \sqrt{2} } \end{align*}さらに分母を有理化すると
\begin{align*} \quad \frac{\sqrt{5}+1}{ \sqrt{2} }=\frac{\sqrt{10}+\sqrt{2}}{2} \end{align*}したがって
\begin{align*} \quad \sqrt{3+\sqrt{5}}=\frac{\sqrt{10}+\sqrt{2}}{2} \end{align*}平方根の性質を利用したり、分母を有理化したりするので、優先順位を考えて上手に変形しなければなりません。かなり習熟度が問われる問題です。
計算過程が長くなりますが、手順を1つずつ確認しながら進めましょう。同時進行で複数の作業をすると、符号や約分のミスが多くなります。
問3のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。
根号の前に2を作って解く問題は、平方根を変形する問2と、多項式を分数にする問3の2パターン。
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さいごに、もう一度まとめ
- 二重根号は外側の根号を外す。
- 根号を外すとき、絶対値の記号を忘れない。
- 絶対値の記号を外すとき、正負の吟味をする。
- 正負の吟味をしなくて済むように、多項式は大きい数から並べる。
- 根号の前に2があるか必ず確認。
- 根号の前に2を作る方法は2パターン。