確率|確率の基本性質について
積事象・和事象、余事象を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問
$1. \quad 52$ 枚のトランプの中から $1$ 枚のカードを引くとき、ハートまたはエースである確率を求めよ。
$2. \quad$ 白玉 $3$ 個と赤玉 $4$ 個が入っている袋から、$2$ 個の玉を同時に取り出すとき、次の確率を求めよ。
$(i) \quad 2$ 個とも同じ色である確率
$(ii) \quad$ 少なくとも $1$ 個は赤玉である確率
問1の解答・解説
問1
$52$ 枚のトランプの中から $1$ 枚のカードを引くとき、ハートまたはエースである確率を求めよ。
52枚から1枚を引くときの根元事象は52個あり、それらを含むのが全事象です。ですから、起こりうるすべての場合の数は52通りです。
ハートまたはエースである事象は、ハートである事象とエースである事象の和事象です。この2つの事象は、互いに排反ではありません。ですから、ハートかつエースである事象(積事象)についても考慮しなければなりません。
各事象が起こる場合の数は以下のようになります。
各事象が起こる場合の数
- 全事象:52通り
- ハートである事象:13通り
- エースである事象:4通り
- ハートかつエースである事象:1通り
以上をもとにハートまたはエースである確率を求めます。
問1の解答例
$52$ 枚のトランプから $1$ 枚を引くとき、場合の数は全部で $52$ 通り。
また、ハート、エース、ハートかつエースである場合の数は
ハートである場合の数 … $13$ 通り
エースである場合の数 … $4$ 通り
ハートかつエースである場合の数 … $1$ 通り
したがって、ハートまたはエースである確率は
\begin{align*} \quad \frac{13}{52} + \frac{4}{52} – \frac{1}{52} &= \frac{13+4-1}{52} \\[ 7pt ] &= \frac{16}{52} \\[ 7pt ] &= \frac{4}{13} \end{align*}問1のポイントと解答例をまとめると以下の通りです。
問2の解答・解説
問2(i)
白玉 $3$ 個と赤玉 $4$ 個が入っている袋から、$2$ 個の玉を同時に取り出すとき、次の確率を求めよ。
$2$ 個とも同じ色である確率
白玉と赤玉の合わせて7個から2個を同時に取り出します。このときの取り出し方は、2個の玉の組合せの総数です。すべての玉を区別して組合せの総数を求めると、全部で ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 通りです。
このとき、根元事象は ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 個あり、それらを含むのが全事象です。ですから、起こりうるすべての場合の数は ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 通りです。
2個とも同じ色である事象は、2個とも白色である事象と2個とも赤色である事象の和事象です。この2つの事象は、同時に起こることはないので、互いに排反です。
各事象が起こる場合の数は以下のようになります。
各事象が起こる場合の数
- 全事象: ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 通り
- 2個とも白色である事象: ${}_3 \mathrm{ C }_2$ 通り
- 2個とも赤色である事象: ${}_4 \mathrm{ C }_2$ 通り
以上をもとに2個とも同じ色である確率を求めます。
問2(i)の解答例
$7$ 個の玉から $2$ 個の玉を同時に取り出すとき、場合の数は全部で ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 通り。
また、$2$ 個とも白色である場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$ 通りで、$2$ 個とも赤色である場合の数は ${}_4 \mathrm{ C }_2$ 通り。
ここで、$2$ 個とも白色である事象と $2$ 個とも赤色である事象は互いに排反である。
したがって、$2$ 個とも同じ色である確率は
\begin{align*} \quad \frac{{}_3 \mathrm{ C }_2}{{}_7 \mathrm{ C }_2} + \frac{{}_4 \mathrm{ C }_2}{{}_7 \mathrm{ C }_2} &= \frac{3 \cdot 2}{7 \cdot 6}+\frac{4 \cdot 3}{7 \cdot 6} \\[ 7pt ] &= \frac{3 \cdot 2+4 \cdot 3}{7 \cdot 6} \\[ 7pt ] &= \frac{1+2}{7} \\[ 7pt ] &= \frac{3}{7} \end{align*}計算のやり方は解答例の通りでなくても構いません。計算ミスをしないように注意しましょう。
問2(ii)では、問題文の文言に注目しましょう。
問2(ii)
白玉 $3$ 個と赤玉 $4$ 個が入っている袋から、$2$ 個の玉を同時に取り出すとき、次の確率を求めよ。
少なくとも $1$ 個は赤玉である確率
問題文に「少なくとも」という文言があるので、余事象を利用します。
少なくとも1個は赤玉である事象の余事象は、2個とも白玉である事象です。
2個とも白玉である事象が起こる場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$ 通りです。以上をもとに少なくとも1個は赤玉である確率を求めます。
問2(ii)の解答例
$7$ 個の玉から $2$ 個の玉を同時に取り出すとき、場合の数は全部で ${}_7 \mathrm{ C }_2$ 通り。
また、$2$ 個とも白色である場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$ 通り。
したがって、少なくとも $1$ 個は赤色である確率は
\begin{align*} \quad 1-\frac{{}_3 \mathrm{ C }_2}{{}_7 \mathrm{ C }_2} &= 1-\frac{3 \cdot 2}{7 \cdot 6} \\[ 7pt ] &= 1-\frac{1}{7} \\[ 7pt ] &= \frac{6}{7} \end{align*}余事象を利用せずに求めることもできます。しかし、余事象を利用した方が楽な計算になるので、積極的に利用しましょう。
問2のポイントと解答例をまとめると以下の通りです。
Recommended books
単元ごとに得意・不得意がある場合、短期間で学習できる教材があると便利です。
オススメその1
1冊目は『これならわかる! 図解 場合の数と確率』です。
図が豊富で丁寧に解説されています。また、問題も多く扱っているので、演習不足にならないでしょう。
重複なく、漏れがないように数えるための考え方、数え方の基本をマスターできる教材です。
以下、2冊は短期間で学習するのに適した問題集です。場合の数や確率について一通り学習した後に取り組むと良いでしょう。
オススメその2
2冊目は『SPEED攻略10日間 数学 場合の数と確率』です。
Z会の教材は難しいというイメージがありますが、この教材は基本レベルから扱っているので、安心して取り組めます。
例題・類題・入試問題を繰り返し演習する構成になっており、典型問題の考え方や解き方を理解し、身につけることができます。
オススメその2
3冊目は『大学入試10日で極める 場合の数と確率』です。
どちらかと言えば、理系向けの教材です。短期間で、基礎から難関大突破レベルまで効率的に学習できます。
主要大学の入試において、近年出題率の高い分野の問題が掲載されているのもポイントです。また、補充問題も充実しているので、これ1冊で演習量もカバーできます。
さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 積事象は共通部分、和事象は和集合と考えよう。
- 2つの事象を扱うとき、2つの事象が同時に起こるかどうかに注意しよう。
- 2つの事象が同時に起こらない(排反である)とき、積事象は存在しない。
- 「少なくとも」という文言があれば、余事象を利用しよう。
- 全事象が起こる確率は1。