数学2
2次式の因数分解を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&\text{次の $2$ 次式を、複素数の範囲で因数分解せよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad 15x^{\scriptsize{2}}+14x-8 \\[ 7pt ]
&(2) \quad x^{\scriptsize{2}}-2x-2 \\[ 7pt ]
&(3) \quad x^{\scriptsize{2}}+2x+3
\end{align*}
例題では2つの項からなる2項式でしたが、本問では3項式なので注意しましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
\begin{align*}
&\text{次の $2$ 次式を、複素数の範囲で因数分解せよ。} \\[ 5pt ]
&\quad 15x^{\scriptsize{2}}+14x-8
\end{align*}
暗算では難しそうなので、2次方程式にして解を求めます。2次の項の係数と定数項を確認して、因数分解できそうか判断します。
問(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad 15x^{\scriptsize{2}}+14x-8 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{を解くと、} \\[ 5pt ]
&\quad \left(3x+4 \right)\left(5x-2 \right) = 0 \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = -\frac{4}{3} \ , \ \frac{2}{5}
\end{align*}
たすき掛けによって、方程式の左辺を因数分解できるます。たすき掛けを難しく感じるのであれば、解の公式を利用しましょう。
求めた解を利用して、与式を因数分解した形で表します。ここで、2次の項の係数が1ではないことに注意しましょう。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x = -\frac{4}{3} \ , \ \frac{2}{5} \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad 15x^{\scriptsize{2}}+14x-8 = 15 \left\{x-\left(-\frac{4}{3} \right) \right\} \left(x-\frac{2}{5} \right) \\[ 7pt ]
&\text{これを整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad 15x^{\scriptsize{2}}+14x-8 = \left(3x+4 \right) \left(5x-2 \right)
\end{align*}
因数分解した形で表すとき、符号ミスはもちろんですが、2次の項の係数 を忘れやすいので注意しましょう。
2次方程式の解から、2次式の因数を求めること自体はそれほど難しくありません。ただし、得られる因数は、係数が1の1次式です。ですから、2次の項の係数が1でないときに注意が必要です。
因数分解した後の変形については、カッコの前の15を上手に使います。ただ、この変形をいまいち理解していない人が意外と多いので、以下に丁寧に記述しておきます。
因数分解後の変形について
\begin{align*}
&15 \left\{x-\left(-\frac{4}{3} \right) \right\} \left(x-\frac{2}{5} \right) \\[ 7pt ]
= &15 \left(x+\frac{4}{3} \right) \left(x-\frac{2}{5} \right) \\[ 7pt ]
= &3 \cdot 5 \left(x+\frac{4}{3} \right) \cdot \left(x-\frac{2}{5} \right) \quad \text{($15$ の因数分解)} \\[ 7pt ]
= &3 \cdot \left(x+\frac{4}{3} \right) \cdot 5 \cdot \left(x-\frac{2}{5} \right) \quad \text{(交換法則)} \\[ 7pt ]
= &\left\{3 \left(x+\frac{4}{3} \right) \right\} \left\{5 \left(x-\frac{2}{5} \right) \right\} \quad \text{(結合法則)} \\[ 7pt ]
= &\left(3x+4 \right) \left(5x-2 \right) \quad \text{(分配法則)}
\end{align*}
因数分解した後の2次式は、因数の積で表されています。ですから、交換法則や結合法則が成り立つので、これらを利用して変形できます。15を3と5に因数分解するのもポイントです。
交換法則によって因数の位置を入れ替え、結合法則によって掛け算する相手を特定します。最後は分配法則によってカッコの中の1次式を整理します。係数に分数がない1次式が得られます。
実際には、このような変形は暗算で済ませます。慣れていなければ、たとえ答案が長くなるとしても、変形の様子が分かるように記述しながら進めていく方が良いでしょう。
問(2)の解答・解説
問(2)
\begin{align*}
&\text{次の $2$ 次式を、複素数の範囲で因数分解せよ。} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-2x-2
\end{align*}
問(1)と同じ要領で解きます。2次方程式にして解を求めます。2次の項の係数が1であるので、1次の項の係数と、定数項に注目して因数分解できそうか判断します。
左辺の2次式を因数分解するのは難しそうなので、解の公式で解を求めます。
問(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-2x-2 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{を解くと} \\[ 5pt ]
&\quad x = \frac{-(-1) \pm \sqrt{(-1)^{\scriptsize{2}} – 1 \cdot (-2)}}{1} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = 1 \pm \sqrt{3}
\end{align*}
求めた解を利用して、与式を因数分解した形で表します。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x = 1 \pm \sqrt{3} \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-2x-2 = \left\{ x-\left(1 – \sqrt{3} \right) \right\} \left\{ x-\left(1 + \sqrt{3} \right) \right\} \\[ 7pt ]
&\text{これを整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-2x-2 = \left(x-1 + \sqrt{3} \right) \left(x-1 – \sqrt{3} \right)
\end{align*}
解が多項式の場合、符号ミスを起こしやすいので注意しましょう。
なお、平方根は実数なので、「複素数の範囲で因数分解」という題意を満たします。これまでの因数分解と比べると違和感を持つかもしれませんが、与式は実数の範囲で因数分解されています。
問(3)の解答・解説
問(3)
\begin{align*}
&\text{次の $2$ 次式を、複素数の範囲で因数分解せよ。} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+3
\end{align*}
2次方程式にして解を求めます。2次の項の係数が1です。方程式の左辺を因数分解できるのが最も楽な展開ですが、無理であれば、2次方程式の解を求めて因数分解します。
左辺の2次式を因数分解するのは難しそうなので、解の公式で解を求めます。
問(3)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+3 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{を解くと} \\[ 5pt ]
&\quad x = \frac{-1 \pm \sqrt{1^{\scriptsize{2}} – 1 \cdot 3}}{1} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = -1 \pm 2i
\end{align*}
求めた解を利用して、与式を因数分解した形で表します。
問(3)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x = -1 \pm 2i \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+3 = \left\{ x-\left(-1-2i \right) \right\} \left\{ x-\left(-1+2i \right) \right\} \\[ 7pt ]
&\text{これを整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+3 = \left(x+1+2i \right) \left(x+1-2i \right)
\end{align*}
普段ならこのような因数分解をすることはほとんどありません。しかし、複素数の範囲であれば、このように因数分解できます。
本問では「複素数の範囲で」という条件がありましたが、特に範囲が指定されない限り、因数分解は有理数の範囲で行うのが一般的です。
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さいごにもう一度まとめ
- 2次式の係数が実数であれば、複素数の範囲で常に1次式の積に因数分解できる。
- 2次式の因数分解では、2次方程式にして解を求める。
- 2次の係数が1以外のときは気を付けよう。
- 2次式を因数分解するとき、範囲の指定がなければ有理数の範囲で因数分解しよう。