図形と計量|正弦定理と余弦定理を扱った問題を解いてみよう
余弦定理の使い方
問題を解く前に余弦定理の式を思い出してみましょう。
余弦定理
\begin{align*} &\quad a^{2} = b^{2} + c^{2} -2bc\cos A \\[ 7pt ] &\quad b^{2} = a^{2} + c^{2} -2ac\cos B \\[ 7pt ] &\quad c^{2} = a^{2} + b^{2} -2ab\cos C \end{align*}余弦定理の式は3通りあります。これらの式を使うのは、一般に、辺の長さを求めるときです。このとき、角に注目して使い分けます。たとえば、∠Bが与えられていれば、2番目の式を使います。
ただし、角の大きさを求めるときにも余弦定理を使うことがあります。その際には、余弦について変形した式を使います。
余弦、または角の大きさを求めるとき
\begin{align*} &\quad \cos A = \frac{b^{2} + c^{2} – a^{2}}{2bc} \\[ 10pt ] &\quad \cos B = \frac{a^{2} + c^{2} – b^{2}}{2ac} \\[ 10pt ] &\quad \cos C = \frac{a^{2} + b^{2} – c^{2}}{2ab} \end{align*}どちらの使い方であっても、余弦定理を使うには、三角形の3辺と1つの内角に注目することが大切です。
余弦定理の使い方を整理できたところで、次の問題を解いてみましょう。
余弦定理を扱った問題を解いてみよう
問2(1)の解答・解説
問2(1)
$\triangle ABC$ において、次の値を求めよ。
\begin{align*} \quad b=5 \ , \ c=8 \ , \ A=60^{\circ} \end{align*}のとき $a$
問題をよく観察しつつ、作図しましょう。辺や角の大小関係を考慮すると、c=8よりも短くなりそうだと予想できます。
問2(1)は、辺BCの長さaを求める問題です。
辺BCの対角である∠Aが与えられています。余弦定理において、Aに対する余弦cosAを含む式を利用します。
1行目にそのまま公式を書き、2行目に数量を代入した式を書きます。
問2(1)の解答例
余弦定理より
\begin{align*} \quad a^{2} = b^{2} + c^{2} -2bc\cos A \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad b=5 \ , \ c=8 \ , \ A=60^{\circ} \end{align*}より
\begin{align*} \quad a^{2} &= 5^{2} + 8^{2} -2 \cdot 5 \cdot 8 \cdot \cos 60^{\circ} \\[ 7pt ] &= 25 + 64 -2 \cdot 5 \cdot 8 \cdot \frac{1}{2} \\[ 7pt ] &= 49 \end{align*}$a \gt 0$ より
\begin{align*} \quad a = 7 \end{align*}予想通りc=8よりも短くなったので大丈夫そうです。念のためミスがないか確認しましょう。
また、余弦定理で辺の長さを求めるとき、さいごに平方根を求める必要があります。このとき、きちんと正負の吟味を忘れないようにしましょう。
問2(1)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
問2(2)の解答・解説
問2(2)
$\triangle ABC$ において、次の値を求めよ。
\begin{align*} \quad a=13 \ , \ b=8 \ , \ c=7 \end{align*}のとき $A$
問2(2)は、∠BACの大きさAを求める問題です。
問題をよく観察しつつ、作図してみましょう。作図するとき、3辺の大小関係を意識しましょう。作図の結果、求めたいAは鈍角になるだろうと予想できます。
角を求めるので、余弦定理の式をそのままでは使い勝手が悪いです。ですから、Aに対する余弦cosAについて変形した式を利用します。
問2(2)の解答例
余弦定理より
\begin{align*} \quad \cos A = \frac{b^{2} + c^{2} -a^{2}}{2bc} \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad a=13 \ , \ b=8 \ , \ c=7 \end{align*}より
\begin{align*} \quad \cos A &= \frac{8^{2} + 7^{2} -13^{2}}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 7pt ] &= \frac{64 + 49 -169}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 7pt ] &= \frac{-56}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 7pt ] &= -\frac{1}{2} \end{align*}$0^{\circ} \lt A \lt 180^{\circ}$ より
\begin{align*} \quad A = 120^{\circ} \end{align*}予想通りAは鈍角になったので大丈夫そうです。念のためミスがないか確認しましょう。
また、余弦cosAからAの値を求めるとき、角のとり得る範囲を示して、Aの値を求めましょう。
問2(2)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
余弦や正弦の値から角の大きさを求めるには、三角比の方程式で学習したことを利用しましょう。このとき、角の範囲の確認と作図をセットにして求める習慣を付けておきましょう。
分母の掛け算はそのままにしておこう
数を代入した後、計算に進みますが、何でもその都度計算すれば良いというわけではありません。計算のルールを守っていれば、その順序は前後しても構いません。
問2(2)で言えば、分母にある2・8・7の乗算は、分子にある64+49-169の加算が終わるまでそのままにしておきます。分子の整理が終わると、約分できる可能性が高いからです。
分子の計算を最優先しよう
\begin{align*} \quad \cos A &= \frac{8^{2} + 7^{2} -13^{2}}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 10pt ] &= \frac{64 + 49 -169}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 10pt ] &= \frac{-56}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 10pt ] &= \frac{-8 \cdot 7}{2 \cdot 8 \cdot 7} \\[ 10pt ] &= -\frac{1}{2} \end{align*}分母が2・8・7のままであれば、因数に分解されているので、約分しやすいはずです。約分のコツは、因数を考えることです。
乗算してしまうと、せっかくの因数が分からなくなります。しかも、数が2・8・7=112と大きくなるので、扱い辛くなってしまいます。
112と56の約分よりも、2・8・7と56の約分の方がやりやすいでしょう。56の因数は7,8なので、約分できることはすぐに分かります。
計算全般で言えることは、できるだけ小さい数で扱うことです。この辺りは経験がものを言うので、コツコツ計算演習を重ねていきましょう。
基本的に、数が大きくなればなるほど、約分するのが大変になり、場合によっては約分を見逃す可能性があるので注意しよう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 与えられる条件に応じて、正弦定理や余弦定理の式を使い分けよう。
- 正弦定理を扱った問題では、外接円の半径を求める問題が頻出。
- 余弦定理を扱った問題では、余弦の値から角の大きさを求める問題が頻出。
- 対角と対辺の関係にある角と辺に注目しよう。
- 公式に数を代入した後の計算では、分数の扱いや約分に注意しよう。
- 分数を扱う計算では約分を想定して、むやみに数を大きくしないようにしよう。