図形の性質|接線と弦について
接線や弦を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1の解答・解説
問1
図において、$\triangle ABC$ の内接円と辺 $AB \ , \ BC \ , \ CA$ の接点をそれぞれ $P \ , \ Q \ , \ R$ とするとき、$BP$ の長さを求めよ。
問1は線分BPの長さを求める問題です。線分BPの長さは、接線の長さです。
△ABCの3辺は、3つの頂点A,B,Cからそれぞれ引いた接線に相当します。ですから、頂点A,B,Cと接点P,Q,Rとの距離はそれぞれ接線の長さになります。
接線の長さの性質を利用すると、接線の長さが等しい線分が3組できます。これを利用して線分BPの長さを求めます。
問1の解答例
接線の長さの性質より
\begin{align*} &\quad AP = AR \\[ 7pt ] &\quad BP = BQ \\[ 7pt ] &\quad CQ = CR \end{align*}ここで $AP=2$ より
\begin{align*} &\quad AR = 2 \\[ 7pt ] &\quad CR = CA – AR = 3 \\[ 7pt ] &\quad CQ = 3 \\[ 7pt ] &\quad BQ = BC – CQ = 4 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad BP = 4 \end{align*}長さの等しい線分に記号を入れておきましょう。接線の長さを求める問題では、線分の長さを時計回り(または反時計回り)に順序良く求めていくだけです。
問1は接線の長さの性質を利用する典型的な問題なので、確実に解けるようにしておきましょう。
問1のポイントと解答例は以下のようになります。
問2(1)の解答・解説
問2(1)
図において、角 $x$ を求めよ。
問2(1)は、角xを求める問題です。接線と弦があることから、接弦定理を利用する問題だと予想できます。
準備として、大きさの等しい角には記号を書き込んでおきましょう。接弦定理を利用して角xを求めます。
問2(1)の解答例
接弦定理より
\begin{align*} \quad x = \angle BAC \end{align*}$\angle BAC=60^{\circ}$ より
\begin{align*} \quad x = 60^{\circ} \end{align*}接弦定理を利用すると、すぐに角xを求めることができます。
問2(1)のポイントと解答例は以下のようになります。
問2(2)の解答・解説
問2(2)
図において、角 $y$ を求めよ。
問2(2)も同じように接弦定理を利用する問題ですが、問2(1)よりも難易度の高い問題です。解ける人とそうでない人がはっきりする良問です。差がつく問題なので、しっかり解けるようにしておきましょう。
大きさを求めたい∠BPCは弧BCに対する円周角です。接弦定理を利用するには、∠ABC(または∠ACB)の大きさを求める必要があります。∠BACが与えられているので、大きさの分かる角を増やしましょう。
まず、△ABCに注目します。円の外部の点Aから接線が2本引かれています。接線の長さを利用します。
問2(2)の解答例 1⃣
接線の長さより
\begin{align*} \quad AB = AC \end{align*}であるので、$\triangle ABC$ は二等辺三角形。
よって
\begin{align*} \quad \angle ABC = \angle ACB \end{align*}$\angle CAB = 50^{\circ}$ より
\begin{align*} \quad \angle ABC =\frac{1}{2}\left(180^{\circ}- 50^{\circ} \right) \end{align*}したがって
\begin{align*} \quad \angle ABC = \angle ACB = 65^{\circ} \end{align*}次は、弦BCにおいて接弦定理を利用します。
問2(2)の解答例 2⃣
\begin{align*} &\vdots \\[ 7pt ] \quad \angle ABC &= \angle ACB = 65^{\circ} \end{align*}接弦定理より
\begin{align*} &\quad \angle BPC = \angle ABC \\[ 7pt ] &\quad ( \angle BPC = \angle ACB )\end{align*}よって
\begin{align*} \quad \angle BPC &= 65^{\circ} \\[ 7pt ] \therefore \ y &= 65^{\circ} \end{align*}接線と弦が見られるので、接弦定理を利用することは予想できますが、大半の人はここで手が止まってしまうのではないかと思います。接線の長さに気付くことがポイントです。
問2(2)のポイントと解答例は以下のようになります。
なお、接線の長さを利用せずに接弦定理だけで解くこともできます。この場合、以下のようになります。
問2(2)の別解例
接線ℓにおいて接弦定理より
\begin{align*} \quad \angle BPC = \angle ABC \end{align*}接線 $m$ において接弦定理より
\begin{align*} \quad \angle BPC = \angle ACB \end{align*}よって
\begin{align*} \quad \angle BPC = \angle ABC = \angle ACB \end{align*}これより、$\triangle ABC$ は二等辺三角形であるので
\begin{align*} \quad \angle BPC = \frac{1}{2} ( 180^{\circ} – \angle BAC ) \end{align*}$\angle BAC= 50^{\circ}$ より
\begin{align*} \quad \angle BPC &= 65^{\circ} \\[ 7pt ] \therefore \ y &= 65^{\circ} \end{align*}別解であれば、接弦定理の結果から△ABCが二等辺三角形であることが分かります。これでも解くことはできますが、やはり、自分から接線の長さに気付けるようにしておきたいところです。
図形の問題全般に言えますが、線分の長さや角の大きさなどの関係を可視化することが大切です。与えられた情報から新たな情報を得ていくことが図形の問題を解くために必要な作業です。
情報を可視化することは、新たな気付きを得ることができるのが最大のメリット。入試の合否に関わってくるので、きちんと習慣化しておこう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 円の外部の1点から引いた2本の接線の長さは等しい。
- 接点を通る弦と接線とがつくる角は、その角の内部にある弧に対する円周角に等しい。
- 接弦定理を利用するときは、大きさの等しい角が基本的に2組あると思っておく。
- 接線の長さと接弦定理を組み合わせた問題は要注意。