図形と計量|空間図形への応用について

数学1

空間図形への応用について

直方体を扱った問題を解いてみよう

次の問題を考えてみましょう。

直方体を扱った問題
問2

設問全体に目を通すと、問2(2)に「cosθ」という用語が出てきているので、やはり三角比を使うだろうと予想できます。

また、問2(3)で三角形の面積を求めるために、それまでに必要な数量を求めておく必要があります。計算ミスをしないように気を付けましょう。

問2(1)の解答・解説

問2(1)

直方体 $ABCD-EFGH$ において、$AB=\sqrt{6} \ , \ AD=\sqrt{3} \ , \ AE=1$ であるとき、次のものを求めなさい。

$\quad AC \ , \ AF \ , \ AH$ の長さ

作図すると以下のような図が描けます。必要に応じて面を抜き出して、2次元で考えるようにします。

第2問(1)の作図
問2(1)の作図その1

また、直方体を部分的に展開した図も描いておきます。

第2問(1)の作図その2
問2(1)の作図その2

展開図にすると辺の関係がよく分かります。線分AC、AF,AHは長方形の対角線であるので、それらの長さを三平方の定理で求めます。解答例は以下のようになります。

第2問(1)の解答例
問2(1)のポイントと解答例

問2(2)の解答・解説

問2(2)

直方体 $ABCD-EFGH$ において、$AB=\sqrt{6} \ , \ AD=\sqrt{3} \ , \ AE=1$ であるとき、次のものを求めなさい。

$\quad \angle ACF= \theta$ とするとき、$\cos \theta$ の値

問2(1)で求めたAC,AF,AHの長さも必要に応じて使いましょう。

∠ACFに注目しているので、∠ACFを含む面である△ACFを考えます。

第2問(2)の作図
問2(2)の作図

△ACFは直方体の内部にできる三角形です。ただし、問2(1)で3辺の長さを求めたので、3辺の長短に注意して抜き出します。ちなみに線分CFの長さは、線分AHの長さに等しいことを利用します。

△ACFの3辺の長さが分かっているので、余弦定理を利用すれば∠ACF=θとしたときのcosθの値を求めることができます。

問2(2)の解答例

$\triangle ACF$ において、余弦定理より

\begin{align*} \quad \cos \theta &= \frac{{AC}^{2} + {CF}^{2} – {AF}^{2}}{2 \cdot AC \cdot CF} \\[ 7pt ] &= \frac{{3}^{2} + {2}^{2} – {\left( \sqrt{7} \right)}^{2}}{2 \cdot 3 \cdot 2} \end{align*}

余弦定理の式に数を代入したら、ミスのないように計算していきます。解答例の続きは以下のようになります。

第2問(2)の解答例
問2(2)のポイントと解答例

余弦や正弦の値(cosθやsinθ)からθを求めるとき、吟味のためにθの範囲が必要です。三角形の内角であるときには、0°<θ<180°です。

また、次の問2(3)で△ACFの面積を求める必要があるので、正弦sinθの値を求めておきました。

問2(3)の解答・解説

問2(3)

直方体 $ABCD-EFGH$ において、$AB=\sqrt{6} \ , \ AD=\sqrt{3} \ , \ AE=1$ であるとき、次のものを求めなさい。

$\quad \triangle ACF$ の面積 $S$

問2(1),(2)で求めたAC,AF,AHの長さやcosθも必要に応じて使いましょう。

△ACFの面積Sを求めるためには、正弦sinθの値が必要になります。第2問(2)で余弦cosθの値を利用します。

余弦cosθの値から正弦sinθの値を求めるとき、一番利用するのが三角比の相互関係です。ただし、今回は∠θの大きさが分かるので、∠θの大きさを利用して正弦sinθの値を求めても良いでしょう。

正弦sinθの値は問2(2)で求めたので、△ACFの面積を求めます。三角比を用いた三角形の面積の公式を利用します。

問2(3)の解答例

$\triangle ACF$ の面積 $S$ を求めると

\begin{align*} \quad S &= \frac{1}{2} \cdot AC \cdot CF \sin \theta \\[ 7pt ] &= \frac{1}{2} \cdot 3 \cdot 2 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \end{align*}

公式に数を代入した後はミスのないように計算します。解答例の続きは以下のようになります。

第2問(3)の解答例
問2(3)のポイントと解答例

平面図形、空間図形に限らず、できるだけ正確に作図しましょう。正確に作図できれば、長さの関係や角の大きさを予想でき、計算ミスに気付けることもあります。

入試でも作図の重要度が高くなっているので、作図する習慣を付けておいた方が無難でしょう。ちょっとした作図で気付きを得ることもできるので、面倒がらずに手を動かしましょう。

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図形の問題は、気付けないと全くと言って良いほど手も足も出なくなります。気付けるかどうかはやはり日頃から作図したり、図形を色んな角度から眺めたりすることだと思います。

そのためにもやはり演習量は大切です。はじめのうちは何事も質よりも量の方を意識してこなす方が良いと思います。全体を一度通ってから質を考えると効率が良いでしょう。

演習をこなすとなると、単元別になった教材を使って集中的にこなすと良いでしょう。網羅型でも良いですが、苦手意識のある単元であれば、単元別に特化した教材の方が良いかもしれません。

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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう

  • 正四面体では、垂線と底面との交点は、底面の外接円の中心となる。
  • 正三角形の重心は、外接円の中心と重なる。
  • 空間図形では、三平方の定理も利用する。
  • 平面図形で考えられるものは、空間図形で考えずに、必要な図形を抜き出して考える。
  • 小問形式になっていることが多いので、次の小問を意識しながら解く。