式と証明|3次式の展開について
3次式の展開を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
次の式を展開せよ。
\begin{align*} &(1) \quad \left(x-2 \right)^{3} \\[ 7pt ] &(2) \quad \left(a+3b \right)^{3} \\[ 7pt ] &(3) \quad \left(x+1 \right)(x^{2} -x +1) \end{align*}最初のうちは公式を見ながらで良いので、対応関係を考えながら公式を使ってみましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
次の式を展開せよ。
\begin{align*} \quad \left(x-2 \right)^{3} \end{align*}公式を使うときのコツは、式の形に注目することです。与式をよく観察しましょう。
問(1)の式は、乗法公式の②式(差の立方)と同じ形をしています。
それぞれの式で使われる文字が異なるので、与式との対応関係を確認してみましょう。
問(1)の解答例 1⃣
与式
\begin{align*} \quad \left(x-2 \right)^{3} \end{align*}乗法公式(差の立方)
\begin{align*} \quad \left(a – b \right)^{3} = a^{3} -3a^{2}b +3ab^{2} -b^{3} \quad \cdots \text{②} \end{align*}与式と②式の左辺を比べる。
$2$ 式から、$a$ を $x$ に、$b$ を $2$ に置き換えれば良い。
対応関係が分かったら、公式のaをxに、bを2に置き換え、各項を整理します。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad &\left(a – b \right)^{3} = a^{3} -3a^{2}b +3ab^{2} -b^{3} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}よって、②式に
\begin{align*} \quad a=x \ , \ b=2 \end{align*}を代入すると
\begin{align*} \quad \left(x-2 \right)^{3} &= x^{3} -3x^{2} \cdot 2 +3x \cdot 2^{2} -2^{3} \\[ 7pt ] &= x^{3} -6x^{2} +12x -8 \end{align*} \begin{align*} \therefore \ \left(x-2 \right)^{3} = x^{3} -6x^{2} +12x -8 \end{align*}ここでは丁寧に記述しました。実際は、公式との対応関係をいちいち記述しません(解答例1⃣の記述)。
記述するとすれば、公式に対応する文字を代入した式を記述します。慣れれば暗算できるようになるので、最終的には一行で済むでしょう。
問(1)の解答例(実際の記述)
\begin{align*} \quad \left(x-2 \right)^{3} &= x^{3} -3x^{2} \cdot 2 +3x \cdot 2^{2} -2^{3} \\[ 7pt ] &= x^{3} -6x^{2} +12x -8 \end{align*}問(2)の解答・解説
問(2)
次の式を展開せよ。
\begin{align*} \quad \left(a+3b \right)^{3} \end{align*}問(2)は、乗法公式の①式(和の立方)と同じ形です。公式と与式の対応関係を確認します。
問(2)の解答例 1⃣
与式
\begin{align*} \quad \left(a+3b \right)^{3} \end{align*}乗法公式(和の立方)
\begin{align*} \quad \left(a + b \right)^{3} = a^{3} +3a^{2}b +3ab^{2} +b^{3} \quad \cdots \text{①} \end{align*}与式と①式の左辺を比べる。
$2$ 式から、$b$ を $3b$ に置き換えれば良い。
文字は同じですが、係数が異なることに注意しましょう。
対応関係が分かったら、公式のaはそのままで、bを3bに置き換え、各項を整理します。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad &\left(a + b \right)^{3} = a^{3} +3a^{2}b +3ab^{2} +b^{3} \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}よって、①式に
\begin{align*} \quad b=3b \end{align*}を代入すると
\begin{align*} \quad \left(a+3b \right)^{3} &= a^{3} +3a^{2} \cdot \left(3b \right) +3a \cdot \left(3b \right)^{2} +\left(3b \right)^{3} \\[ 7pt ] &= a^{3} +9a^{2}b +27ab^{2} +27b^{3} \end{align*} \begin{align*} \therefore \ \left(a+3b \right)^{3} = a^{3} +9a^{2}b +27ab^{2} +27b^{3} \end{align*}よく間違えるのが、問(2)のような係数が1以外の数になったときの展開です。
文字だけでなく、係数も2乗したり、3乗したりしなければなりません。最初のうちは忘れやすいので気をつけましょう。
問(2)の解答例(実際の記述)
\begin{align*} \quad \left(a+3b \right)^{3} &= a^{3} +3a^{2} \cdot \left(3b \right) +3a \cdot \left(3b \right)^{2} +\left(3b \right)^{3} \\[ 7pt ] &= a^{3} +9a^{2}b +27ab^{2} +27b^{3} \end{align*}問(3)の解答・解説
問(3)
次の式を展開せよ。
\begin{align*} \quad \left(x+1 \right)\left(x^{2} -x +1 \right) \end{align*}問(3)の式は、乗法公式の③式(立方の和)と同じ形をしています。
③,④式に当てはまるかどうかの判断は、慣れるまで難しいかもしれません。何となく似ていると感じたら、公式と照らし合わせてみると良いでしょう。
公式と与式の対応関係を確認します。
問(3)の解答例 1⃣
与式
\begin{align*} \quad \left(x+1 \right)\left(x^{2} -x +1 \right) \end{align*}乗法公式(立方の和)
\begin{align*} \quad \left(a + b \right)\left(a^{2} -ab +b^{2} \right) = a^{3} +b^{3} \quad \cdots \text{③} \end{align*}与式と③式の左辺を比べる。
$2$ 式から、$a$ を $x$ に、$b$ を $1$ に置き換えれば良い。
対応関係が分かったら、公式のaをxに、bを1に置き換え、各項を整理します。
問(3)の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad &\left(a + b \right)\left(a^{2} -ab +b^{2} \right) = a^{3} +b^{3} \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}よって、③式に
\begin{align*} \quad a=x \ , \ b=1 \end{align*}を代入すると
\begin{align*} \quad \left(x+1 \right)\left(x^{2} -x +1 \right) &= x^{3} +1^{3} \\[ 7pt ] &= x^{3} +1 \end{align*} \begin{align*} \therefore \ \left(x+1 \right)\left(x^{2} -x +1 \right) = x^{3} +1 \end{align*}実際の記述例です。分配法則で展開すると面倒なので、公式を利用できるようになりましょう。
問(3)の解答例(実際の記述)
\begin{align*} \quad \left(x+1 \right)\left(x^{2} -x +1 \right) &= x^{3} +1^{3} \\[ 7pt ] &= x^{3} +1 \end{align*}ところで、公式③(立方の和)や公式④(立方の差)に慣れるのは、意外と時間が掛かります。公式内の2次式が曲者だからです。
3次式の乗法公式③,④
立方の和
\begin{align*} \quad \left(a + b \right)\left(a^{2} -ab +b^{2} \right) = a^{3} +b^{3} \quad \cdots \text{③} \end{align*}立方の差
\begin{align*} \quad \left(a – b \right)\left(a^{2} +ab +b^{2} \right) = a^{3} -b^{3} \quad \cdots \text{④} \end{align*}公式③,④は $2$ 次式の乗法公式と勘違いしやすい。
$2$ 次式の乗法公式
\begin{align*} &\quad \left(a + b \right)^{2} = a^{2} +\underline{2}ab+b^{2} \\[ 7pt ] &\quad \left(a – b \right)^{2} = a^{2} -\underline{2}ab+b^{2} \end{align*}3次式の乗法公式③,④では、2次式の2項目の係数は±1です。2次式の乗法公式に似ているので、係数を2にしてしまいがちです。
公式との対応関係を見抜き、公式にはめて解こう
例題のような簡単な式であれば、暗算するのも容易いでしょう。簡単なので計算過程を省略したくなります。しかし、学習したての頃であればあまりおすすめしません。
学習したての段階で最も意識しておきたいのは、解けることではなく、公式との対応関係を正しく見抜くことです。これが不十分だと、複雑な式になった途端に手が出せなくなり、公式を利用できることにも気づけなくなります。
また、公式はいわゆる型なので、公式にきちんと当てはめて解くことがとても大切です。これができるようになると、公式を使いこなせるようになります。
公式を短期間で使いこなせるようになるには、与式と公式とを上下に書き並べることです。
毎回書き並べていると、自然と覚えてしまいます。公式を覚えようと思って覚えるのではなく、公式を使っていくうちに自然と覚えるのが最良です。
そして、初めのうちは過程を省略せず、丁寧に進めていくことも大切です。
少々面倒だと感じるかもしれませんが演習量が適切になると、いつでも過程を省略することができるようになります。
公式との対応関係を正しく見抜こう。また、公式を使うとき、型に嵌めるイメージを持とう。「初めは丁寧に、次は速く、最後は丁寧に速く」を目指そう。
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さいごにもう一度まとめ
- 3次式の展開は、乗法公式を利用しよう。
- 3次式の乗法公式は符号の違いに注意して覚えよう。
- 係数の累乗に気をつけよう。
- まずは対応する箇所を置き換えて公式を使ってみよう。
- 公式を暗記するのではなく、公式を使いながら覚えよう。