数学1・A|2017センター試験・第1問を解いてみよう
第1問〔3〕について
第1問〔3〕は「2次関数」を扱った問題です。
2016年のセンター試験では「2次関数」からの出題がありませんでしたが、2017年では第1問の小問として復活しました。全体の構成は以下のようになっています。
「2次関数」からの出題内容
- 頂点の座標を求める問題
- 頂点のx座標の最小値を求める問題
- 頂点のy座標の最小値を求める問題
どれも頻出の問題ですが、難易度を上げているのが与えられた式g(x)です。
与式g(x)にはx以外にも文字aがあり、その累乗を含む項が多いのが特徴です。変形でミスを誘うような式になっています。
解答欄セソ、タチツテト
最初の小問は、頂点の座標を求める問題です。頂点の座標を求めるには、与式を2次関数の標準形に変形します。
標準形への変形は、問題で特に指示されていない場合でも行いましょう。
与式には文字aが含まれますが、aは定数なので数と同じ扱いをします。
解答欄セソ、タチツテトの解答例
右辺が非常に長く、複雑に見えますが、慌てず確実に平方完成します。
このような項の多い式の変形では、符号ミスが多くなります。丁寧に変形しましょう。難しく感じるかもしれませんが、数学2・Bのことを考えてサッとこなせるレベルにしておきましょう。
2次関数の平方完成は「1次の項の係数の半分、半分の2乗を引く」の順番で。
解答欄ナニヌネ
次の小問は、頂点のx座標の最小値を求める問題です。
頂点の座標を求めた結果、頂点のx座標がaで表されることが分かります。aは定数でしたが、この問題で「aは実数全体を動く」という条件が追加されました。
この条件からaは定数ではありますが、すべての実数が対象です。つまり、変数のような扱いになったということです。
このようなaによって頂点のx座標が表されます。aの値が決まると、頂点のx座標はただ1つに決まるので、頂点のx座標はaの関数であると言えます。しかも、頂点のx座標はaの2次式で表されるので、2次関数です。
関数だからと言って、いつもx,yの文字を使っているとは限らない。関数の定義をしっかり理解しよう。
頂点のx座標はaの2次関数になっているので、平方完成して標準形に変形します。
解答欄ナニヌネの解答例
標準形に変形した後、軸・頂点・凸の情報を確認して、グラフを描きます。標準形の式から、グラフが下に凸の放物線だと分かります。
また、定義域はaの取り得る範囲なので、すべての実数です。定義域がすべての実数であるとき、下に凸のグラフであれば、頂点のy座標が最小値になります。
解答欄ノハ
次の小問は、頂点のy座標の最小値を求める問題です。
文章中に「t=a2とおくと」という表現があります。これは、次数を下げるときに使われる手法です。頂点のy座標はaの4次式なので、文字を置き換えると次数が下がってtの2次式になります。
次数を落とすことで、2次関数に帰着させて解く方法。指数関数などではよく使う。
このような文字の置き換えをするとき、注意すべきことがあります。
それは「置換前の文字a2の条件を、置換後の文字tに受け渡す」ということです。これを忘れる人が多いので気を付けましょう。
解答欄ノハの解答例
aはすべての実数であるので、a2は0以上の値になります。これより、tも0以上の値になります。これが定義域になります。
tに置き換えた後の式を標準形に変形します。標準形の式から、下に凸の放物線になります。ここでは、定義域があるので、頂点のy座標が最小値になるとは限りません。
もし、条件の受け渡しをしていなければ、aがすべての実数という条件から、頂点のy座標が最小値になると考えるでしょう。これでは求めた解が解答欄に合わないので、非常に焦っただろうと思います。良く考えられた問題だと思います。
定義域t≧0におけるグラフを書けば、t=0のときの頂点のy座標が最小値になることが分かります。
第1問〔3〕のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
第1問〔3〕のように、頂点の座標を関数と見立て、その関数の最大値や最小値を求める問題は過去に何度も出題されています。
第1問は完答を見込める大問だと思います。そうでなくても高校数学の最初の方の単元で、基本的な内容の多いところからの出題です。他の単元に与える影響は少なくないので、この単元をしっかりマスターしておく必要があるのではないかと思います。
教科書で確認しておきたい知識
- 乗法公式を利用した展開・因数分解
- 平方根の性質
- 実数などの数の分類
- 命題や集合などの用語の定義
- 共通部分と和集合
- 命題の真偽と集合の包含関係との関わり
- 2次関数の標準形への式変形
- 関数の最小値(定義域の有無)
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