図形の性質|作図について
作図を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
$\triangle {ABC}$ の外心 $O$ を作図せよ。
問(1)は、三角形の外心を作図する問題です。外心は3辺の垂直二等分線の交点です。垂直二等分線を少なくとも2本引いて交点をつくります。
外心の作図(i)
まず、コンパスを使って、3つの頂点A,B,Cを中心とする円(弧)を描きます。どの円(弧)も同じ半径です。
3つの円(弧)が交わって交点ができます。
外心の作図(ii)
先ほどできた交点を通る直線を定規で引きます。
A,Bを中心とする円(弧)の交点を通る直線が、線分ABの垂直二等分線です。
また、A,Cを中心とする円(弧)の交点を通る直線が、線分ACの垂直二等分線です。そして、2本の垂直二等分線の交点が△ABCの外心Oです。
作図のときに注意したいのは、作図の跡を残しておくことです。ただ、作図の跡を残しておくので、たくさんの弧や線が入り混じっていると分かり辛くなります。できるだけ簡潔にし、どのように作図したかが分かるようにしておきましょう。
作図の手順一覧は以下のようになります。
問(2)の解答・解説
問(2)
$\triangle {ABC}$ の内心 $I$ を作図せよ。
問(2)は、三角形の内心を作図する問題です。内心は3つの内角の二等分線の交点です。内角の二等分線を少なくとも2本引いて交点をつくります。
内心の作図(i)
まず∠ABCの二等分線を引きます。
内心の作図(ii)
同じ要領で、∠ACBの二等分線を引きます。
2本の角の二等分線が交わって交点ができます。この交点が△ABCの内心Iです。
作図の手順一覧は以下のようになります。
問(3)の解答・解説
問(3)
円 $O$ 上の点 $P$ における接線を作図せよ。
問(3)は、円周上の点における接線を作図する問題です。円の中心と接点とを通る直線が、接線と直交することを利用します。
円O上の点Pにおける接線の作図(i)
直線OPを引きます。点Pを中心とする半径OPの円(弧)を描きます。直線OP上には、点Pに関して、点Oと反対側に交点ができます。この交点をQとします。このとき、OP=PQです。
円O上の点Pにおける接線の作図(ii)
次に、コンパスの開きを少し大きくして、点O,Qをそれぞれ中心とする円(弧)を描きます。2つの円(弧)が交わって交点ができます。
さいごに、交点を通る直線を定規で引くと、線分OQの垂直二等分線ができます。この垂直二等分線が円O上の点Pを通る接線です。
作図の手順一覧は以下のようになります。
問(4)の解答・解説
問(4)
点 $P$ から円 $O$ に引いた接線を作図せよ。
問(4)は、円外の点から円に引いた接線を作図する問題です。問(3)では円周上の点であったのに対して、問(4)では円外の点であることに注意しましょう。
作図のイメージは以下のようになります。図のように、円O上にある接点R,Sが分かれば、問(3)のように作図できますが、実際には分かっていません。ですから、接点R,Sをどのようにしてつくるかを考えます。
接点R,Sは、直線OR,OSと接線PR,PSとが直交するときの交点です。
90°の角ができることを考慮すると、線分OPを直径とする円の周上にあることが分かります。直径OPに対する円周角がつねに 90°になるからです。
このような直径OPの円上にあって、円O上にもある点が接点R,Sです。つまり、接点R,Sをつくるには、線分OPが直径となる円を描けばよいことが分かります。
点Pから円Oに引いた接線の作図(i)
方針が決まったので作図していきます。まず、線分OPの垂直二等分線を引きます。
線分OPとその垂直二等分線が交わって交点ができるので、これをQとします。この点Qが、線分OPを直径とする円の中心です。
点Pから円Oに引いた接線の作図(ii)
次は、点Qを中心とする半径PQ(またはOQ)の円を描きます。
円を描くと、円Oと交わって交点が2つできます。
点Pから円Oに引いた接線の作図(iii)
円Oとの交点をそれぞれR,Sとします。この交点R,Sが接点です。これまでが接点の作図手順です。
さいごに、点Pと接点R,Sを通る直線を定規で引きます。この直線PR,PSが、点Pから円Oに引いた接線です。
直角と言われると、垂線を引きたくなりますが、直径に対する円周角でも90°の角をつくることができます。
作図の手順一覧は以下のようになります。
問(5)の解答・解説
問(5)
線分 $AB$ を $2:1$ に内分する点 $C$ を作図せよ。
問(5)は、内分点をつくる問題です。これをマスターすると、外分点も作図できるようになります。
線分ABを2:1に内分する点Cの作図(i)
まず、点Aを通る直線を引きます。このとき、線分ABとのなす角が鋭角になるように直線を引きましょう。
自分で引いた直線上に、AP=PQ=QRとなる点P,Q,Rを作ります。
コンパスの開き具合いを変えず、同じ長さとなるように直線上に円(弧)との交点を作ります。これで線分ARを3等分したような図を作図できます。
また、定規を使って、直線BRを引きます。このとき、点R側を少し延長しておくと良いでしょう。
線分を等分するのは、基本作図の「線分を移す」方法で作図する。ただし、コンパスを開きすぎると、点を作りにくくなるので注意しよう。
線分ABを2:1に内分する点Cの作図(ii)
次に、点Rを中心とする半径QRの円(弧)を描きます。これと直線BRが交わって交点ができます。この交点をSとすると、QR=RSです。コンパスを開いたままにしておきます。
さらに、点Q,Sをそれぞれ中心とする円(弧)を描きます。交点ができるのでTとします。これでQR=RS=QT=STとなるひし形ができます。
線分ABを2:1に内分する点Cの作図(iii)
さいごに2点Q,Tを通る直線を引きます。
直線QTが線分ABと交わって交点ができます。この点がCです。
直線QTは直線BRに平行です。平行線と線分の比の関係から、AQ:QR=AC:CB=2:1が成り立ちます。このことから、点Cが線分ABを2:1に内分する点となります。
作図の手順一覧は以下のようになります。
問(6)の解答・解説
問(6)
線分 $AB$ を一辺とする正方形を作図せよ。
問(6)は、特定の線分ABを一辺とする正方形を作図する問題です。ひし形の成立条件に、内角の大きさが90°であるという条件が加われば、その図形は正方形になります。
線分ABを一辺とする正方形の作図(i)
線分ABの一端を延長して、半直線ABにします。延長するのはどちらでも構いません。
線分ABを半直線ABにした後、点Bを中心とする半径ABの円(弧)を描きます。半直線AB上に交点ができるので、これをPとします。このとき、AB=BPです。
線分ABを一辺とする正方形の作図(ii)
今度はコンパスの開きぐらいを少し大きくして、点A,Pを中心とする円(弧)をそれぞれ描きます。交点ができるので、この交点と点Bを通る直線を定規で引きます。
垂線でも良いのですが、ここでは線分APの垂直二等分線を引いています。垂直二等分線と最初の円(弧)が交わって交点ができます。これを点Cとします。
線分ABを一辺とする正方形の作図(iii)
点A,Cをそれぞれ中心とする半径ABの円(弧)を描きます。円(弧)が交わって交点ができます。これを点Dとすると、AB=BC=CD=DAです。
さいごに、定規を使って、点Aと点D、点Cと点Dをそれぞれ結びます。このような手順で線分ABを一辺とする正方形ができます。
点Bを通る垂線を引いたように、点Aを通る垂線を引いても正方形を作図できます。ただ、上述の作図例よりも手間が増えるのであまりお勧めしません。
作図の手順一覧は以下のようになります。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 7つの基本作図を描けるようになろう。
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- 直角の作図は、垂線だけでなく、直径に対する円周角でも可能。